「法隆寺金堂壁画」刊行会

法隆寺　有賀祥隆（東北大学名誉教授）　鈴木嘉吉（奈良文化財研究所名誉所員）　東野治之（奈良大学教授）　水野敬三郎（東京藝術大学名誉教授）　便利堂

刊行にあたって

日本仏教文化の源流、班鳩の法隆寺金堂に千数百年の時を経て伝えられてきた壁画は、アジア仏教美術における至宝というべき傑作であり、また私たちの芸術精神のよりどころとして広く愛されてきましたが、1949年1月26日早朝、不慮の火災によりそのほとんどを焼損してしまいました。

幸いなことに、この金堂壁画は焼損前の1935年に京都の便利堂により大型のガタス乾板を用いて精確に撮影されていました。本書は、法隆寺において厳重に保管されてきたものを含め、これらの貴重なガラス乾板から、およそ半世紀ぶりに、壁画を細部まで鮮明に再現し、壮麗なる白鳳絵画の美を甦らせるとともに、歴史、建築史、彫刻史、絵画史研究の成果を踏まえ、壁画成立の背景とその歴史的意義を総合的に捉えなおす画期的試みであります。　　岩波書店